年々コンパクト化が進んでいるおひなさまの世界、当然のことながら殿姫ふたりだけの「親王飾り」も増えております。
ただその分、質の良いお人形をお求めになる方が目立ちます。
雛人形業界にあって、京都で生産されるいわゆる「京雛」は、その最高峰と言えますが、京雛を制作する多くの職人さんは、金襴や黄櫨染、黒雲立沸などの伝統的な生地を主として使われるのに対して、京都のもうひとつの伝統産業である京友禅にこだわって制作を続けているのが片岡尊正氏です。
通常、雛人形は、胴体を作って衣裳を着せる「着付師」、お顔を作る「頭師(かしらし)」、更には手足を作る職人さん、そして冠や太刀などの小道具を作る職人さん、おひなさまが座る「親王台」をつくる職人さんなど、複数の職人さんの手によって出来上がります。
片岡さんのおひなさまは、これを更に細分化し、おひなさまに合わせた友禅の下絵を専門の下絵師が描き、それを基に友禅師が生地を染め上げ、その上に手描きで彩色、金彩を施して衣裳を仕立て、最後に片岡氏が雛人形に制作します。
デザイン考案から雛人形の制作に至るまで、なんと20工程を経て一組のおひなさまが完成するのです。
あくまでも京都の友禅にこだわる片岡氏は、お姫様の重ねにも全て正絹生地を使用し、女雛の背から裾に伸びる「引き腰」には帯締を用いています。
このように手間をかけ、最高の素材を用いて制作されたおひなさまは、流石にそこそこのお値段となってしまいますが、お嬢様の初節句をお祝いするのに相応しいばかりでなく、成人されて嫁がれた後も一生の宝物として、ご自分の赤ちゃんのおひなさまと並べてお飾りいただける品としてご好評をいただいております。
ご来店の際は、是非ご覧になってください。
友禅生地は金襴地に比べてデリケートですが、片岡氏の友禅生地には撥水、抗菌効果を含む繊維保護剤加工が施されています。
片岡尊正作 京九番親王・手描き京友禅 宝づくし
今年は新たに「ぼかし」を施した衣裳もできあがりましたので、また明日ご紹介させていただきます。