雛人形のご予約会が始まって、連日お客様におこしを頂いております。
今日はおひなさまの衣裳についての、ちょっとしたおはなしです。
男雛の襟首を合わせ止める部分を「釈迦頭(しゃかがしら)」とよびます。首の後ろ側から首の横を通って、右前に伸びる撚り紐をさします。
下の写真の襟元についている金茶の紐がそれです。
この釈迦頭。本来は、男雛の衣裳と同じ生地を撚り合わせて作るのが正式とされています。
ただ、現在の雛人形の殆どは、上の写真のように衣裳と同系色の紐を縫い込んで作られています。
おひなさまは、あくまでもお人形であり、その名の通り「ひとがた」なので、実際の装束と全く同じ必要はないわけですから今はこの形が一般的となっています。
でも、そんな細かいところにこだわりを見せる職人さんもいらっしゃいます。
下の写真は、大野春斎氏の作品です。男雛の衣裳と同じ生地を使って釈迦頭を作っています。
このほか、京雛の片岡尊正氏も男雛の衣裳に使用する友禅記事を撚ってひも状にし、釈迦頭を作っています。
そのように言われてみなければ、なかなか気づかない点なのですが、衣裳と同じ生地で釈迦頭を作るとお殿様の首回りがとても美しくなるのです。
現在ではごく僅かな職人さんしか作らなくなってしまった本物の「釈迦頭」ですが、こんなところにちょっと気をつけて見てみるのも面白いと思います。